平成17 年度 環境技術指導者養成講座(前期)

          水とみどりのネットワーク
     ― 関西のアーバンフリンジにおける都市と農業の関係を考える ―
                          上野裕士(内外エンジニアリング(株))

 日本の都市は,中国や西欧の都市のように強固な城壁によって囲まれる中で形成された歴史を持っていない。そして,産業発展などに伴う人口増加や土地利用変化への圧力に対して,周辺の農地などを抱え込み,安易に外延的にスプロール化を進行させながら都市は膨張してきた。この過程で,農業地域として張り巡らされていた道水路や農業集落の上に,都市が被さって形成された。

 スプロール化による都市の膨張は様々な問題を引き起こしたことから,これに対抗して計画的な都市形成を図るべく都市計画法の大改正が1968 年(昭和43 年)に行われ,市街化区域と市街化調整区域といういわゆる「線引き」が導入された。
 更に,建築基準法と連動した地域地区制度の運用や,ほぼ同時に制定された農業振興地域の振興に関する法律(農振法)による農用地区域という農地の線引き制度とともに,「土地利用の純化」が進められてきた。

 線引きによる土地利用の純化という考え方は,土地利用計画を扱う人間にとって常識的な概念として扱われてきたが,土地利用種とその単位面積の適用を誤ると弊害を伴う。
 更にわが国では線引きの行為が行政間の縄張り争いの道具の意味合いも有していたことから,対象地域の現状を反映した計画として有効に働きにくい状況にある。

 例えば,日本では都市計画の構成要素として先ず道路があり,建築用途があり,最後に公園・緑地が来るという流れになっている。そこには,山林や農地,湿地などの「地目」の概念が抜けている。また,水に関わる概念は,都市計画の中では河川は前提条件であり,インフラとしての上下水道が含まれるだけである。
 これらの結果,都市の中の山林や農地は緑地もしくは空閑地として扱われ,用水路は河川や排水路(下水の雨水幹線等)と見なされている。
 つまり,都市の中には農業は無いものとして扱われている。しかし実際には,都市の中心部でなければ,市街化区域であっても営農を続けている農地があり,市民農園があり,これらの農地へ農業用水を供給するため池や用水路は残されている。地域によっては,市街化調整区域(農業振興地域)よりも市街化区域の方で農業が盛んな所さえある。

 日本の総人口が減少するのを目前に控えて,都市圏が膨張し続けることは考えにくい。であるならば,都市住民にとって身近な「都市」という空間を人に優しく環境に優しい空間に変えていくために,農業に関わる空間や施設・機能を活用できないものだろうか。

 本講座では,このような考え方に沿って,先ず,関西(特に大阪)のアーバンフリンジにおける地区の変遷を踏まえて,都市と農業(もしくはその形骸)との関係を確認する。
 次に, その活用を考えるために農業に関わる空間や施設・機能をヒントとして提示し,活用の可能性を受講者の皆さんと一緒に考えたい。