平成17 年度 環境技術指導者養成講座(前期)

      学校における環境教育の現状と課題
          ― 教師と子どもの環境学習への摸索と挑戦 ―
                               橘 淳治(大阪府教育センター)

学校における環境学習の必要性
 子どもの学力低下が一部では言われているが,我国は世界的に見ても整備された教育制度の中で学校教育が行われているため,科学技術の水準は世界の最先端に達し,これは今後も維持されるものと思われる。
 また,かつて大きな社会問題になった公害も,その克服に向けて政府や民間レベルでの努力の結果,解決の方向に向かいつつある。
 しかしながら,地球温暖化,オゾン層の破壊,熱帯林の減少など地球規模の環境問題や家庭雑排水による水質汚濁, ゴミ問題などの都市生活型環境問題は,被害者自身もある意味では加害者であるほか,政治, 経済など複雑な要因が絡むためなかなか解決の糸口が見られないのが現状である。

 平和で豊かな生活を送れる基礎を作るための教育も,もう一度,「本当の豊かさ」を考える必要が生じてきた。自然の中で得られる心の安らぎも現代社会にあっては非常に重要であり,残された自然を守るほか失われた自然の回復や創造のために子どもの環境意識を高める教育,とりわけ環境教育の必要性が高まってきている。

環境教育と環境学習
 環境教育の始まりは19 世紀後半の自然保護運動に端を発し,急激な工業化に伴い発生した公害に対処する住民運動や公害防止教育へと繋がり,近年の人と自然の関わりを考えさせる環境教育へと発展した。
 それでは,学校における環境教育について考えてみる。
 環境教育の目的に関しては,1975 年の国際環境教育会議でのベオグラード憲章が基本となっている。すなわち,環境に対する関心,知識,態度,技能,評価能力,参加の6 項目である。ここで, 学校教育の主体である子どもに視点を移すと,環境教育ではなく環境学習が重要になってくる。
 環境教育は指導者側の観点,すなわち指導法が中心になってくるが,子どもの側からすれば知識や技能などを修得することであり,環境学習と言う方が望ましい。

学校における環境学習
 学校における環境学習は国語や社会などのような「教科」としての位置付けはなされていない。そのほとんどは,理科や社会などの教科の単元と関連して行われるほか総合的な学習の時間や道徳,ホームルーム活動の中で行われるため,教科書もなく実践は教師と生徒に任されているのが現状である。従って,地域や学校,教員による実践の差は非常に大きい。
 もちろん,学習指導要領の中でも環境教育の推進を掲げているので,文部科学省からは「環境教育指導資料」などが出され,また,都道府県教育委員会からも環境教育の手引書的なものも作られているが,学校現場の教員は生徒の実態に合わせて再構築してからでないと使えないのが現状である。

教師と子どもの環境学習への取組
 このような状況でも各学校では優れた取組が行われている。例えば,地域の汚濁河川の水質調査と解決に関する学習,都市の学校における多様な生物を呼び戻すビオトープ作りなどがある。
 この講座では学校の環境学習と市民の環境教育の連携などについても話を進めたい。