平成17 年度 環境技術指導者養成講座(前期)

     土壌を活用した水浄化法の理論と実際
                         菅原正孝・濱崎竜英(大阪産業大学)

 都市域の水環境を改善するには、水量が豊富であるかどうか、水質は清浄かどうか、さらには生物にとって棲みやすいのか、といったいくつかの指標に注目する必要がある。河川、池沼は、その面積ばかりでなく、水量そのものも都市開発や下水道整備にともなって低減傾向にある。
 また、大都市では、河川の形はしていてもその上を高速道路、や自動車道路が走っているケースが多々あり、水があっても、それを河川空間として扱うことには、かなりの違和感がある。河川自体、自然河川とはほど遠いコンクリート三面張りの開水路のようになっていることも多い。

 以上のように都市域内に存在する水ではあるが、やはり水の質的な向上を図ることが「水環境を改善する」ための最低限の実施項目ということになる。

 改善のために、現実に各種の処理施設が設置、整備されているのであるが、都市域の水環境という視点から考えれば、いくつかの問題点がある。
 ひとつは、下水道のシステム固有のものであり、終末処理場では、処理水の一点集中は避けられず、そのためにその水の有効再利用先が大きく制限されるだけでなく水循環という点からも問題である。
 もうひとつは、処理の仕方があまりにも人工的過ぎるということである。処理効率を高めるための処置とは物理化学的手法と高度化されすぎた生物処理法との組み合わせへの依存度が高くなると、少しでも水をじっくりと育むという視点が欠けてしまうことから、水本来の自然浄化能による浄化の重要性が忘れ去られてしまうのではないかという危惧の念がある。

 水環境という場合には、本来、ある程度清浄な水の存在に加えてそれを支えている土壌を抜きにして語ることはできないのであり、ここでは土壌が果たしてきた役割の大きさを再認識するとともに都市、農村を問わず、水環境改善にとっての土壌の重要性を論じ、その水浄化への応用について紹介する。

 土壌を活用した水浄化法は、土壌浸透浄化法、土壌浸透式水浄化法、土壌処理法などと呼ばれており、自然の浄化能力を利用して水を浄化する技術の一つである。一般的な処理工程は、土壌表面に汚水を散水することによって、土壌層中を汚水が浸透する過程において汚濁物質が物理化学的なろ過や吸着という分離、および生物化学的な分解という機能によって除去されるということから成っている。

 浄化可能な汚濁物質は、浮遊物質、有機物、リンなどであるが、環境ホルモンなど微量有害物質の除去も可能である。処理の対象となる水としては、生活雑排水、し尿や畜産排水の処理水、河川・湖沼の環境水、雨水などが挙げられる。

 土壌浸透浄化法に用いられる浄化材料は、いわゆる自然土壌に限定されていない。浄化能力を高めるために、活性炭、木炭、凝集剤などを添加することも多い。

 また、土壌そのものについても造粒化をするなど、耐久性、透水性を高めるための技術的な工夫がなされるが、効率化を目指して土壌層の構成や施工についても種々工夫がなされている。

 水量負荷(ろ過速度)は、おおむね数p/日から数m/日であり、他の水浄化法と比較すると大きな敷地面積を必要とする。